辰野勇さんインタビュー

日本を代表するアウトドア用品メーカー「モンベル」の会長であり、登山家、冒険家でもある辰野勇さんに、親子で楽しむ野あそびのポイントをレクチャーしてもらおう!

※この記事はソトイコ!秋4号(2016年9月23日配布)の内容と同一です。

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山登りをすると親子が見えてくる

 私は今までに、たくさんの冒険をしたり、山に登ったりしてきました。自分の子どもを山登りやカヌーへ連れていったこともありましたが「絶対にやるべきだ!」と、無理にやらせたことは一度もありません。

 最近は、山に登ると〝生きる力〟が身につくといわれ、子どもに無理やり山登りをさせる親もいます。ですが、小さい子どもを無理やり登らせても、しんどくなって山登りが嫌いになるだけです。

 親が子どもに山登りをすすめたいのであれば、押しつけるのではなく、親が山登りを楽しんでいる姿を見せればいいのです。親が口に出さなくても、子どもは親の背中を見て気づいてくれるものです。

 しかし、今の子どもが山や自然に触れる機会が少ないのと同様に、親自身も山や自然とふれあう機会が少ない。親も一緒に体験しながら自信をつけるといいですね。親が自信をつけることで、もう少し気楽になれると思うのです。そのために親は、なんでもありの「ものさし」を持つべきなんです。

 たとえば、私が自分の会社を「世界一にする」と言ったとしましょう。ですが、世界一にもいろいろあります。「売り上げを世界一にする」「人気を世界一にする」「大きさを世界一にする」。でもこれは、他人と比べることで勝つとか負けるとかを競っているので、なんだか窮屈でイヤなものです。でも「世界一幸せな会社にする」であれば、自分がそう思えば〝世界一〟になれるんです。

 こんなものさしを持っていれば、他人と比べたりすることもなく〝ありのままを見る〟という力が備わると思うのです。そうすると、子どもにもいいところがたくさんあることが見えてきます。「オレの子にしてみたらよくできた!」「これだけできたらいいじゃないか!」と思えるようになってくるのです。

 自分を認める力がつくと、相手を認める力もついてきます。人がこうだから、こうしなくてはいけないではなく、ありのままを見るという力がつくのです。

 自然は、人間本来の感性に気づける場所。壁や天井、スイッチひとつで快適になるエアコンのある環境では感じられない、人の感性に触れられる場所です。山登りなどの〝野あそび〟をすることによって、親と子の本質、そしてありのままの姿を少しでも見られたら、これからの親子関係も、少し変わってくるかもしれません。

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