みんなで遊びながら楽しく体つくり運動!
大西正裕(おおにし まさひろ)さん
順天堂大学大学院でコーチング科学、スポーツ心理学を専攻。社会人陸上競技クラブ「アクセルトラッククラブ」の設立し、かけっこ指導を通して子どもたちに走ることや、体を動かすことの楽しさを伝えている。また、アスリートのコーチとしても活躍。
幼少期は特定のスポーツに専念するよりも、様々な基本動作の習得が優先
「今は特定のスポーツを習う子も増えていて、リフティング連続百回など高度なことができる子もいます。しかし、そういった子であってもスキップや馬とびなどベーシックな運動ができない場合があるんです」と、大西さん。
子どもは本来、自由な運動遊びの中で多種多様な基本動作を覚えていきますが、近年その機会や場所が減りつつあります。さらに、特定のスポーツの早期専門化をしてしまうことで、幅広い動作が身につきにくい傾向に。それによって一つの動作は抜群なのに、単純な運動はできないという、運動能力のアンバランスが起こっていると言います。
「スポーツは様々な動作を組み合わせて、“自分の体を思い通りに動かせるかどうか”が重要です。しかし多種多様の基本動作が身についていないと、『体をうまく動かす能力』が伸びません。すると特定のワザに秀でていても、他の動きやスポーツができず、運動嫌いになってしまう可能性もあります。本来、技術は“基礎”の上にプラスされていくもの。体も神経回路も発達する小学生のうちは技術よりも、たくさんの基本動作を体験し土台をつくることが大切です。土台ができれば中学や高校で技術を教わったときにラクに習得ができますし、新しいスポーツを始めても順応ができます。幼少期は今結果を出すことより、将来を見据えた『伸びしろ』をつくることが大事だと思います」
“本気”で遊べば、子どもたちの運動能力は自然と高まる
大西さんが主宰するかけっこ教室では、体を思い通りに動かすための基礎となる運動を中心におこないます。ドッジボールに始まり、倒立、馬とび、リズム感を養うステップなど、一見かけっこから離れた練習ですが、これらすべてがよい走りや他のスポーツの上達にもつながります。そして、子どもたちが遊ぶように楽しく運動している様子が印象的です。
「僕らのコンセプトは、“本気の遊びが本気の子どもを育てる”です。誰か強制される“遊び”は遊びではありません。子どもたちに体を動かす楽しさを伝え、彼らが自主的に遊ぶなかで運動能力を高めていってほしいと考えています。そして僕ら指導する側も一緒に遊ぶ時は本気。というのも子どもたちに合わせた遊びルールは、意外と体が大きい大人には不利な点が多いんです。そんな本気で遊ぶ大人に勝ったときの子どもの喜びは、ひとしお。その気持ちは今後競技などをするうえで、『格上の選手に勝ちたい』という意欲にもつながると思います」
また、「やってみたい!」と思う雰囲気づくりも大切だと言います。「人と比べて上手い下手ではなく、『新しいことをやってみる』『できないことが、できるようになる』そこに楽しさを見出してもらいたい。だからこそ遊ぶ感覚や雰囲気が大事。やらされているのではなく、楽しく遊ぶ中で自然とできる動作を増やしていってほしいです。そして、『次何やるの?』『もっと教えて!』そんな声が聞こえたら、彼らが主体的に、そして本気で楽しんでくれている証拠だと思っています」