松島美菜さんインタビュー

オリンピック選手の松島美菜さんに聞いた「スポーツと勉強を両立させる時間の使い方」。「水がこわくなくなれば、力がぬけて水に浮けるよ!★初級編★」でインタビューした松島美菜さんはオリンピックで勝つための練習をしながら、薬剤師になるための勉強を続けてきました。松島さんは、スポーツと勉強をどのように両立させたのか。松島さんの時間の使い方をマネしたら、スポーツも勉強も、もっとがんばる気持ちになります。

松島美菜さん写真

松島 美菜(まつしま みな)さん
6歳から水泳を始め、高校3年生の夏に100m平泳ぎで当時の高校新記録を樹立。その後、日本大学で薬学の勉強を続けながら2012年のロンドンオリンピック100m平泳ぎで準決勝まで勝ち進み、2015年のユニバーシアード(世界の大学生のオリンピック)では100m平泳ぎで優勝した。現在は現役を引退し、スポーツの世界で薬学を役立てるため、薬剤師としても活躍中。セントラルスポーツ所属。

こんなにたくさんの観客の前で泳げたなんて!

2012年、ロンドン。オリンピックの準決勝のレースでゴールした直後、松島さんの心はふるえました。

「競泳の会場はプールの中からじゃないと、両側のスタンド席がよく見えなかったんです。だからレース直後にプールから会場を見上げたときに、すごく感激しました。『私はこんなにたくさんの観客の前で、こんなにライトアップされた会場で泳いでいたんだ!』と。レースの結果には悔しい気持ちもありましたが、やっぱりオリンピックという舞台で泳げたことは素直にうれしかったですね」(松島さん)

オリンピックという最高の舞台に向けて努力を重ねてきた松島さんですが、実はこの時、もうひとつのチャレンジをしていました。ロンドンから日本に帰国した翌日は、薬学を勉強する大学生がさけては通れないテストの模擬試験。当時の松島さんは、世界と戦うオリンピック選手でもあり、テストと戦う大学生でもあったのです。

未来のオリンピック選手育成を目的とするジュニアオリンピック(国内の大会)に出場した12歳の松島さん。小学生のときは「練習を休まないこと」を心がけていた

小学生のときの夢をかなえるために

松島さんが薬剤師になりたいと思ったのは、小学生のときのこと。「乳鉢※や乳棒※を使って薬を混ぜる薬剤師さんの姿にあこがれて」のことでした(※=ともに薬を調合する道具)。6歳から水泳を始めた松島さんは中学2年生のころから世界で戦う自信をつけ、高校3年の夏には世界ジュニア選手権100m平泳ぎで2位に!

世界で戦うスポーツ選手になりましたが、「薬剤師になる」という夢を忘れたわけではありませんでした。その夢をかなえるため、松島さんは高校を卒業後、水泳の強豪で、薬学の勉強もできる東京の大学に進学。けれど、やがて水泳の練習をしながら薬学の勉強を続けることが、思った以上に大変なことだとわかりました。薬学の勉強には、覚えなければならないことが山ほどありました。試験のために寝る時間をけずって勉強をしていると、水泳の練習に集中することができません。反対に水泳の大会に出場するために学校を欠席すると、出席日数がたりなくて留年してし まうかもしれない…。毎日が、時間との戦いでした。でも、松島さんは水泳も勉強もあきらめませんでした。短い時間を有効に使って、少しずつ勉強を進めるようになったのです。

2012年ロンドンオリンピックでの一幕

後回しにしなければ、遊ぶ時間が増える

短い時間を有効に使うとは? そうたずねると、松島さんは笑顔でやさしく説明してくれました。

「たとえば家を出る前に5分、10分というちょっとした時間があったら、そういう短い時間に勉強をしたり、やりたかったことや用事をすませてしまうんです。これを続けると、結果的に自分が自由になる楽しい時間が増えることがわかりました。友だちと遊ぶ時間や、休む時間、自分が好きなことをできる時間が増えたんですね。これが、とてもうれしかった。後回しにしないで、少しずつやっていくと、最後に楽しい時間が手に入る。先にやっておいて、後で『やっておいてよかった』と思えるのがうれしい。だから、細かい時間があれば、やろうと思ったことは、やってしまうようになりました」(松島さん)

松島さんは高校生のとき、自分の誕生日当日に当時の高校新記録(50m平泳ぎ女子31秒03)を打ち立てた。「新記録を出したうえに、それが誕生日だったのがとてもうれしくて!」。写真はその記録章。松島さんいちばんのお気に入りだ。

楽しむことと、あきらめないこと

「私が水泳を続けてきたのは、水泳が楽しかったから。水泳に夢中になれたからです。選手として目標に向かって練習を重ねている時は、目の前の課題をクリアするために、ひたすら現実と向き合う日々が続きます。でも、目標としていた大きな試合を終えて振り返ってみると、それがとても「素敵な時間だったな」と思えるんです。なにかに一生懸命になっているときって、とっても充実していて「夢の世界」にいることができました。だから、私は水泳をこれまで続けてこられたんだと思います。水泳でもなんでも、「どうにかしたい」「もっとうまくなりたい」と思うのなら、楽しむこととあきらめないことが大切なのではないでしょうか。練習を楽しめるようになったら、どんどんうまくなると思いますよ」(松島さん)

「楽しむ」というのは、決して難しいことではありません。松島さんは「私は、友だちと水泳に行くのがすごく楽しかった。これも水泳を続けてきた大きな理由です」と話してくれました。自分は、自分らしく楽しめればよい。これなら、あなたにもできるのでは?

水泳のオリンピック選手になるには

公益社団法人日本水泳連盟(水連)が決めたレースで1位か2位になり、水連が前もって決めておいたタイム(派遣標準記録)より速く泳いだら、オリンピックに出場できる。